桂枝湯(けいしとう)
効能・効果
体力虚弱で、汗が出るものの次の諸症: かぜの初期
桂枝湯の解説
桂枝湯は、漢方の原典である『傷寒論(しょうかんろん)』の冒頭に登場する、数ある漢方処方の基本中の基本とも言える薬方です。「湯(とう)」の字がつく処方の多くは、この桂枝湯をベースに発展したとされています。
風邪の初期に用いる点は葛根湯と似ていますが、その適用対象は正反対です。
- 葛根湯: 体力があり、汗をかいていない「ガッチリタイプ」の風邪。
- 桂枝湯: 体力がなく虚弱で、自然に汗がじわじわと出ている「ひ弱タイプ」の風邪。
漢方では、健康な状態は、体表をバリアのように守る「衛気(えき)」と、体内に栄養を与える「営気(えいき)」のバランスが取れている状態と考えます。体力が弱っている人が風邪をひくと、この「営衛の不和(えいえのふわ)」と呼ばれるバランスの崩れが生じ、悪寒がするのに汗がダラダラと出てしまう、という状態になります。
桂枝湯は、この「営衛の不和」を調和させることで、体の機能を正常に戻し、穏やかに病気の原因(邪気)を追い出す手助けをします。
そのため、体力がなく疲れやすい方、胃腸が弱い方、ご高齢者、お子様などの、デリケートな体質の方の風邪のひきはじめに適しています。服用後、温かいお粥などを食べて少し汗ばむくらいに保温して休む、という養生法とセットで効果を発揮するとされています。
含まれる生薬
桂枝湯は、5種類の基本的な生薬で構成されています。
- 桂皮(ケイヒ): 主薬。シナモンのこと。体を温め、気血の巡りを良くし、体表の邪気を発散させます。
- 芍薬(シャクヤク): 筋肉の緊張を緩め、痛みを和らげます。また、汗の出過ぎを抑える働きもあります。
- 生姜(ショウキョウ): 胃腸を温めて保護し、桂皮の発汗作用を助けます。
- 大棗(タイソウ): 「ナツメ」の実。胃腸を保護し、気を補い、他の生薬の刺激性を緩和します。
- 甘草(カンゾウ): 諸薬を調和させ、痛みを和らげます。
葛根湯との関係
葛根湯は、この桂枝湯に、首筋のこりをほぐす「葛根(かっこん)」と、発汗作用の強い「麻黄(まおう)」を加えた処方です。麻黄が含まれていないため、桂枝湯は葛根湯に比べて作用が非常に穏やかで、胃腸への負担も少なく、体力を消耗させすぎる心配がありません。