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甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)

効能・効果

体力中等度以下で、ときに腹の立つ、興奮しやすい、あるいは憂うつであって、あくびをよくするものの次の諸症: 夜泣き、ひきつけ、不眠症、更年期障害、小児の疳(かん)

甘麦大棗湯の解説

甘麦大棗湯は、非常にシンプルかつユニークな構成の漢方薬で、主に精神的な緊張や興奮を和らげるために用いられます。「疳の虫(かんのむし)」の薬として、特に小児の夜泣きやキーキーと声をあげる「疳癪(かんしゃく)」に古くから使われてきました。

この漢方薬は、漢方でいう「心(しん)」の機能失調、特に「心」に必要な栄養(血や陰)が不足した「心血虚(しんけっきょ)」「心陰虚(しんいんきょ)」という状態を改善します。「心」は精神活動の中枢であり、ここが栄養不足になると、精神が不安定になり、不安感、興奮、不眠といった症状が現れます。

甘麦大棗湯は、全て食品としても用いられる甘味のある生薬で構成されており、穏やかに「心」に栄養を与え、高ぶった神経を鎮め、精神を安定させる(養心安神)作用があります。

**「悲しくて泣きたくなる」「理由もなく涙が出る」「あくびが頻繁に出る」**といった、情緒不安定な状態がこの処方を用いる大きな目安となります。

小児だけでなく、大人のヒステリーや不安神経症、更年期障害やPMS(月経前症候群)に伴う情緒不安定、不眠症などにも応用されます。

含まれる生薬

甘麦大棗湯は、わずか3種類の身近な生薬で構成されています。

  • 甘草(カンゾウ): 主薬。急迫症状、つまり筋肉や精神の急な緊張やけいれんを和らげる作用があります。
  • 小麦(ショウバク): 食用の小麦のこと。精神を安定させ、興奮を鎮める効果(安神作用)があります。
  • 大棗(タイソウ): 「ナツメ」の実。気を補い、精神を安定させます。胃腸を保護する働きもあります。

この3つの生薬は、いずれも自然な甘味があり、味が良いため、子どもでも比較的服用しやすい漢方薬です。その穏やかな作用から「和剤(わざい)」(=作用の穏やかな薬)の代表格とされています。

夜泣きに対する他の処方との違い

  • 抑肝散(よくかんさん): 神経の高ぶりを鎮める代表的な処方ですが、こちらは「肝」の高ぶりによるイライラや怒りっぽさが強い、「ギャーギャー」と泣き叫ぶタイプの夜泣きに用いられます。
  • 甘麦大棗湯: 「心」の栄養不足による不安感や悲しみが強い、「ヒイヒイ」「シクシク」と悲しそうに泣くタイプの夜泣きに適しています。