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十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)

**十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)は、消耗した心身を「完全に、大きく補う」という意味を持つ、代表的な「補剤(ほざい)」の一つです。漢方医学の基本的な考え方である「気(き)」と「血(けつ)」の両方が著しく不足した「気血両虚(きけつりょうきょ)」**という状態を改善するために用いられます。

病後・術後の体力低下や、がん治療における副作用の軽減など、医療の現場でも広く活用されています。

「気」と「血」を同時に補う

漢方では、私たちの体は生命エネルギーである「気」と、全身に栄養を運ぶ「血」によって支えられていると考えます。

  • 気虚(ききょ): 「気」が不足すると、疲労倦怠感、食欲不振、気力が出ないなどの症状が現れます。
  • 血虚(けっきょ): 「血」が不足すると、貧血、めまい、顔色が悪い、皮膚の乾燥、髪のトラブルなどが起こりやすくなります。

十全大補湯は、この両方の不足を同時に補うことで、心身の衰弱を根本から立て直す力強い処方です。

どのような人に使われるか?

病後や手術後、慢性的な疾患などで体力が著しく低下し、以下のような「気血両虚」の症状が見られる方に適しています。

  • 顔色が悪く、貧血気味
  • 全身の疲労感が強く、寝込んでいることが多い
  • 食欲が全くない
  • 皮膚がカサカサに乾燥している
  • 手足が冷える
  • 寝汗をかく

効能・効果

「気」と「血」をパワフルに補うことで、消耗した体を力強くサポートします。

  • 病後・術後の体力低下: 手術や大病で衰えた体力の回復を助けます。
  • 疲労倦怠、虚弱体質: 日常生活を送るのもつらいほどの、激しい疲れやだるさを改善します。
  • 食欲不振、貧血: 胃腸の働きを助け、栄養状態を改善します。
  • 手足の冷え、しもやけ: 血行を促進し、体の末端まで温めます。
  • 皮膚の乾燥: 体に潤いを与え、乾燥性の皮膚トラブルを改善します。
  • がん治療のサポート: 化学療法や放射線治療による副作用(食欲不振、貧血、倦怠感など)の軽減や、免疫力の維持に用いられることがあります。

構成生薬

十全大補湯は、「気」を補う**「四君子湯(しくんしとう)」と「血」を補う「四物湯(しもつとう)」**という2つの基本的な漢方薬を組み合わせ、さらに「気」を補い血行を促進する生薬を加えた、合計10種類で構成されています。

  • 【四君子湯のメンバー】: 人参(ニンジン)、蒼朮(ソウジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、甘草(カンゾウ)
  • 【四物湯のメンバー】: 当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)、芍薬(シャクヤク)、地黄(ジオウ)
  • 【追加メンバー】: 黄耆(オウギ)、桂皮(ケイヒ)

服用にあたっての注意点

  • 胃腸が非常に弱い方は、胃もたれなどを感じることがあります。
  • 体力がある方や、体に熱がこもっているタイプの方には適さない場合があります。

非常に頼りになる処方ですが、自己判断での服用は避け、必ず漢方に詳しい医師や薬剤師にご相談ください。